インフルエンザ感染症後の『抜け毛』について

 夏の終わりから秋口にかけて抜け毛に悩まれている患者さんが増えてきました。夏の紫外線や汗などによる頭皮のダメージからくるものと考えられ、一般的に年間を通してこの時期が一番抜け毛が多い時期と言われています。
 しかしながら、今年は例年に比べて抜け毛を気にして来院される患者さんが多く、また最近でも増え続けている印象を持っていたところ、やはりインフルエンザ感染後に生じた抜け毛の問題について、12日12日の朝の情報番組でも取り上げられていました。

 2021年頃に新型コロナ感染症後に生じた抜け毛が問題になりましたが、おそらく今回もインフルエンザ感染症後に生じた休止期脱毛と思われます。

 以下は2021年10月に新型コロナ感染症後の抜け毛についてブログで書いたものですが、参考にしていただけると幸いです。

 一般的に毛髪は5~6年の成長期、2~3週間の退行期、3~4か月の休止期のサイクルを繰り返しています。成長期が終わった後、毛根が委縮して休止期に入ります。それぞれの毛でサイクルが異なるため通常一斉には抜けることはありません。しかしながら、新型コロナに感染すると何らかの原因で成長期が急にストップしていまい、休止期に入ってしまうのではないかと考えられています。これを休止期脱毛といい、その他40歳高熱、出産後、外傷、術後、急激な体重の減少、精神的なダメージなどでも同様のことが起こります。
 国立国際医療研究センター * 1からの報告では新型コロナ患者の24%が回復期に脱毛を訴え、新型コロナ発症2ヶ月後くらいから始まり、およそ100日後くらいまで続くことが多いとされていますが、海外の報告*2では、重症度に関係なく、新型コロナ発症から3〜7ヶ月後くらいに脱毛が現れるとの報告もあり幅が見られます。
*1Prolonged and Late-Onset Symptoms of Coronavirus Disease 2019
*2Telogen effluvium: a sequela of COVID‐19

 上記データを読み解くと、特に対策をせずとも脱毛からおよそ半年くらいで徐々に毛髪が回復してくると予想され、実際に他でもそのような報告が多数認められます。一般的な休止期のサイクルが3~4か月ですので、何らかの原因で退行期を経ずにいっぺんに休止期に入った毛髪が、3~4か月(100日前後)の休止期を経て再び成長期に入り発毛したと考えるとそれを裏付けることになると思います。

 しかしながら、急激な脱毛を半年もそのままにしておくのは精神的にもさらなるの負担となり、より症状が悪化してしまうことも考えられます。現在コロナ脱毛に対する治療のガイドラインなどはありませんが、血管を拡張することで発毛効果が認められるミノキシジルやその他外用剤、内服薬、またサプリメントなどを用いて治療を行うことが多いようです。
 年齢、性別、既往歴の有無などにより選択できる治療法にも幅がありますが、当院でも対応していますので、気になる方はお気軽にご相談ください。