2021.01.22 /
先天性の異常(あざ)

あざの種類

 青あざ、茶あざ、黒あざ、赤あざなど様々な種類があります。発症時期も、生まれつきものや生後すぐに表れるもの、思春期になってから徐々に発症するものまで様々です。治療法や治療抵抗性(治療の効果)も異なりますので、しっかりと理解した上で治療を行いましょう。

青あざ

 青あざはメラニン色素が皮膚の深いところ(真皮)に存在し、青灰色~黒っぽく見えるため総称して青あざと言われています。生まれつき存在するものから生後数週間で出現するもの、思春期以降に出現するものなどさまざなタイプがあります。
 タイプによっては徐々に薄くなっていくものもありますが、年月を経過しても消えないものものあります。
 青あざの治療青あざに対しては数カ月おきにQスイッチレーザーを照射し、過剰に生産されたメラニン色素を破壊します。一般的に皮膚が薄い乳幼児期のうちから治療を開始する方が、高い治療効果が期待できるとされています。輪ゴムではじいたような痛みがありますので、事前に麻酔クリームの塗布、あるいは麻酔テープ貼付して治療を行います。
 青アザの代表的なものに、異所性蒙古斑(いしょせいもうこはん)、太田母斑、青色母斑などがあります。

異所性蒙古斑 
 蒙古斑(もうこはん)は生後早い時期に赤ちゃんお尻や腰に出現する青あざでアジア人に多く見られます。日本人のほぼ100%見られますが、通常小学校に上がる前ころまでに自然消失するため問題になることはありません。
それに対して、お尻や腰以外に出現した青アザを異所性蒙古斑(いしょせいもうこはん)と呼びます。徐々に薄くなることが多いのですが、色調が濃いものは成長した後も残ることがあります。年齢や、部位、色調の濃さ、大きさによって治療方針を検討します。
太田母斑 
 顔にできる青アザで、特に眼の周り、強膜(白目の部分)、頬、側頭部、額、鼻など、三叉神経が支配する領域に現れます。色調は皮膚の中でメラニンが存在する深さによって異なり、青灰色~青、褐色~黒までさまざまなものがあります。生下時から認める場合が多いですが、思春期になって、色調がはっきりとしてくるケースも見られます。多くは顔面の片側のみに存在します。
青色母斑 
 一見するとほくろのようにも見えますが、ダーモスコピーで観察すると全体に青色が強く、多くは手背や足背に発生します。いわゆる普通のほくろに比べると青みがかっており、やや盛り上がった硬いできものです。真皮に分布するメラノサイト(メラニンを産生する細胞)の増殖によるものです。
 比較的よく見られるのは30才代以降の方の顔、背や手足に出現する通常型青色母斑というもので、多くは直径10ミリ以下で半球状に盛り上がった形をしています。
 一方、直径が10mmを超えるものには細胞増殖型青色母斑と呼ばれるものもあります。細胞増殖型青色母斑は幼児期に発症することが多く、頭、おしり、手足によく見られます。少しずつ大きくなり、将来悪性化する可能性がまれにありますので、増大傾向にあるものは切除手術を検討します。大きくならないものであればQスイッチレーザー治療の適応です。

 ※レーザー治療は、回数に制限はありますが、保険が適応されますので安心して治療が受けられます。詳細は診察時、医師にお問い合わせください。

茶あざ

扁平母斑、ベッカー母斑
 表皮内のメラニン色素が増加して茶色のあざとして見える状態です。多くは生下時より存在することが多いのですが、思春期になってから発症する場合(遅発性扁平母)もあります。遅発性扁平母斑はあざの中に毛が生えていることが多いのが特徴です。特に肩にできた毛を有する遅発性扁平母斑をベッカー母斑と呼びます。
 扁平母斑は自然に消失することはありませんので、Qスイッチレーザーにて治療を行います。しかしながら、他のあざに比べてレーザー治療抵抗性で、一見薄くなったように見えても、再発率が非常に高いことが扁平母斑の大きな特徴です。
 1歳までに治療を行えば6~7割の方が消失あるいは効果あり、成人になってからの治療では8割が再発してほとんど同じ濃さまで戻るとされています。できるだけ早期の治療が推奨されますので気になる方は早めの受診をお勧めします。
 
 ※有毛性のベッカー母斑は、Qスイッチレーザーと脱毛レーザーを組み合わせた複合治療が必要になることがあり、その場合一部保険の適応されない治療も含まれます。

表皮母斑
 生下時または生後からみられる褐色の表面がざらざらしたあざで、頚部、体、手足に帯状に細長く広がってみられることが多いです。表皮角化細胞の過形成が原因ですので、自然に薄くなることは期待できません。外見的に気になるようであれば、治療の対象になりますが、悪性化することはありませんので、そのまま経過をみても問題ありません。

黒あざ(ほくろ、巨大色素性母斑など)

 母斑細胞という細胞がメラニン色素を皮膚の浅いところから深いところ全体にわたって作り出すために褐色~黒色に見えるあざです。サイズはほくろのような小さなから、身体の大部分を覆いつくす大きなものまであり、成人で20㎝以上のものを巨大色素性母斑と定義されています。巨大色素性母斑の中でも、まれに全体が毛で覆い尽くされた獣皮様母斑と呼ばれるものがあり、将来的に高い確率で悪性化するといわれています。その他、足の裏、手のひら、爪にできる黒あざはまれに悪性化することがありますので、経過観察と状況に応じた適切な治療が必要です。 
 治療は手術による摘出が基本となります。数mmまでの小さなもので悪性の可能性が考えられない場合であれば、炭酸レーザーで焼灼する方法が整容的にきれいに治ります。数㎝までの皮膚に余裕のある部分にできたものに対しては、メスを用いたくりぬき法や紡錘形に切除して縫縮(切除縫縮)する方法が一般的です。さらに1回で切除できない比較的大きなあざに対しては複数回に分けて切除する分割切除や、周囲の皮膚を動かして傷を閉鎖する皮弁などを駆使して手術を行います。

※ Qスイッチレーザーによる治療は効果が低く、完治はかなり困難です。また黒あざに対してはレーザーによる保険適応もありませんのでQスイッチレーザーを選択する場合には自費診療となります。

赤あざ

 皮膚や皮膚の下の血管が増えたり、血管が拡張したりすることで赤くみえるあざのことです。医学的には血管腫と呼び、①単純性血管腫(ポートワイン母斑)、②いちご状血管腫、③海綿状血管腫 があります。

①単純性血管腫 
 単純性血管腫は生下時より見られます。皮膚の浅いところで毛細血管が広がって血液が溜まってしまうため赤く見えます。年齢とともに色が濃くなったり、若干盛り上がったりすることがあります。
 額の中央部に見られる赤あざをサーモンパッチと呼び、通常2歳くらいまでに消えてしまいますが、まれに赤みが残る場合があります。
 うなじにできる赤あざはをウンナ母斑と呼びます。こちらも2,3歳くらいまでに薄くなりますが、完全に消えない場合もあります。

②いちご状血管腫
 いちご状血管腫は名前の通り、いちごのような見た目の血管腫です。生後より現れて1歳くらいまでは急激に大きく盛り上がる傾向にありますが、5歳〜8歳くらいには自然に小さくなることが多いあざです。以前は特に治療せず経過観察されることも多かったのですが、まれに皮膚の盛り上がりや赤みが残ることもあり、最近では積極的にレーザー治療を行う傾向にあります。

③海綿状血管腫
 海綿状血管腫は生まれつきの毛細血管や静脈の奇形が原因の腫瘍です。触ると柔らかく、表面は少し青っぽく見えます。上記2つとことなり、自然に治ることはありません。体のどの部分にも出来る可能性があり、部位やサイズによって切除や硬化療法などが行われます。

その他
  • レーザー治療には痛みを伴います。麻酔のテープ等を使用しますが、大きさや部位、年齢によっては当院で対応できない場合もあります。
  • 赤あざに対してはその種類も多様で、治療法も多岐にわたります。当院で対応できない場合もありますので、詳細は医師にご確認ください。
  • いずれのタイプのあざの場合も、大きさや部位、年齢によっては全身麻酔下での治療をお勧めする場合もあります。その際には対応できる医療機関にご紹介いたします。