2021.01.22 /
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎の特徴
強いかゆみと発疹(ほっしん)が繰り返しあらわれる皮膚の病気です。発疹は、顔や首、肘、膝裏などにあらわれやすく、ひどくなると全身に広がります。
皮膚を繰り返し掻くことにより、皮膚がゴワゴワと厚くなります。これを苔癬化と言います。さらに同じ部位を搔いていると皮膚が硬く盛り上がり、かゆみが持続するようになります。これを痒疹と呼びます。
アトピー性皮膚炎の皮膚の状態
バリア機能が弱まることで水分が外へ逃げてしまうため、乾燥してカサカサしています。皮膚が乾燥していると、外部からの刺激によってかゆみを生じます。そこで掻いてしまうと、新たな傷ができ傷口が悪化して、皮膚の状態がさらに悪化してしまいます。掻いた刺激でかゆみが増すため、また掻いてしまう・・・という悪循環が生じます。
かゆみの原因
①アレルゲン:ダニ、ほこり、花粉、ペットの毛 など
②皮膚への刺激:衣服・汗・髪・化粧品・シャンプーの接触や摩擦、お風呂の熱 など
③心理的要因:ストレス、不安 など
かゆみの悪循環
①掻くことで、皮膚の状態が悪化
②皮膚の状態が悪化すると、バリア機能が低下
③バリア機能が低下すると、さらにかゆみが増す
皮膚のバリア機能を保つために
皮膚のバリア機能を正常に保つためには、『3大保湿因子』をしっかりと補うことが重要です。正常な皮膚では、水分が保たれ、外部の刺激物質がブロックされています。
①天然保湿因子(NMF):水分を補う
角質細胞の内部に水分をたっぷり補給します。アミノ酸などの成分があります。
②セラミド(細胞間脂質):水分を保つ
水分保持作用が高く、角質細胞の間を埋めて潤いを保ちます。
③皮脂:水分をにがさない
皮脂膜の働きを強化し、水分の蒸発を防ぎます。皮脂類似成分にスクワランがあります。
アトピー性皮膚炎治療 3つの基本
- 適切なスキンケア
皮膚を清潔に保つことは大切なことですが、洗いすぎも返って逆効果になります。汚れを落とすことを目的にするのではなく、適切なスキンケアを目的にすることが大切です。
a. あらう b. ながす c. つかる d. ふく e. 保湿
a. 泡でやさしくあらうことがスキンケアの基本です。固形石鹸の場合は泡立てネットを利用して、また泡立てが苦手な方は最初から泡ででてくるボディーソープもおすすめです。『花びらに触れるように』を意識して。
b. 泡はぬるめのお湯で十分にすすぎ、汚れとともにしっかりながしましょう。泡がのこるとそれが刺激になって皮膚炎を悪化させることがあります。シャンプーやコンディショナーも同様です。
c. 熱いお湯に長く浸かると皮脂が溶け出し、乾燥してかゆみの原因となります。ぬるめのお湯にさっと入るのがおすすめです。また保湿成分が入った入浴剤を使用すると手の届きにくい背中など全身すみずみまでスキンケアが一度にできて簡単です。毎日のことですから、なるべく手をぬけるところは手を抜いて気軽に付き合えるようにしましょう。
d. 水分をふきとるときはこすらないように、身体を包み込むようにしてふきましょう。敏感な肌をタオルでこすると小さな傷となり皮膚炎を助長します。健康な皮膚でもこすりすぎは炎症をおこしてシミのもとになります。『花びらに触れるように』を意識しましょう。
e. 正常な皮膚では皮膚の水分が保たれ、外部からの刺激をブロックします。正常な肌の「角層」は、何層もの角層細胞が重なっています。その角層細胞どうしのすき間を満たし、細胞どうしや水分をつなぎとめているのが、肌の必須成分「セラミド」です。さらに、「スクワラン」は、もともと人間の肌の中にも存在するものですが、ほ乳類や植物に含まれる”スクワレン”からできた成分であり、水分や汗と混じって皮脂膜となり、乾燥や紫外線から肌を守る役割を果たしています。肌のバリア機能にはこれらの保湿成分が大きく関与しており、必要なものを適切に補うことが大切です。入浴直後に行うのがベストです。 - 薬物療法
炎症には外用薬、かゆみには内服薬が使われます。外用薬はステロイドを中心とする治療であることは今も変わりませんが、それ以外の免疫抑制剤による治療の選択肢が広がっています。病状のコントロールの基本はできるだけ早くしっかりと炎症を抑え、その状態を長くキープすることです。以前に症状を繰り返している方は、「寛解導入」後も引き続きプロアクティブ療法(症状が良くなったあとも定期的に抗炎症薬を塗る)により「寛解維持(症状がおちついている状態をキープする)」を目指します。患者さんの状態に応じて薬の量、間隔を調整し、副作用を避けながらこの状態を維持できるようにしていきます。
治療を開始すると、多くの方はすぐに見た目が改善しますが、皮膚の下では炎症が継続しています。このため、この時点で治療をやめてしまうと、すぐに湿疹が再発してしまいます。寛解維持期のケアがより重要になります。
※ステロイドに抵抗がある方もいらっしゃるかもしれませんが、医師とよく相談したうえで、本人に合った治療法を選択しましょう。正しい治療を行うことで、症状が出ない状態にすることが目標です。 - 悪化要因を避ける
汗、髪の毛や衣類との接触、掻破による刺激、化粧品、金属、シャンプーやリンス、ダニ、ほこり、花粉、ペットの毛、食物、ストレスなどで悪化することがあります。これらの要因に対してできるだけ対策することは大事ですが、あまり気にしすぎてそれがストレスになるものよくありません。何事もほどほどが大事です。