2021.01.22 /
まぶた

眼瞼下垂(がんけんかすい)

症状

 まぶたが垂れ下がった状態で、自覚症状としてはまぶたの重み、眼精疲労、頭痛、肩こり、眼瞼痙攣などを認めます。下垂が進行すると眉毛を挙上して眼をあけようとするため、おでこにしわを寄ってきたり、上まぶたが窪んできたりします。その他、二重まぶたの幅が広くなったり、複数のしわが現れたりすることも下垂症の一つのサインです。

原因

 おおきく先天性と後天性にわかれます。
 先天性眼瞼下垂症の主な原因は、まぶたを持ち上げる筋肉(眼瞼挙筋とミューラー筋)に生まれつき問題がある場合と脳神経の異常で、眼を開く神経に麻痺が起きている場合があります。先天性の眼瞼下垂で重度の場合は、視力が悪くなる可能性があるため、早い段階で手術を検討します。
 後天性眼瞼下垂症は、さまざまな要因がありますが、高齢者、白内障術後の方、コンタクトレンズ使用者、アレルギー等で眼をこする方などがなりやすいと言われています。多くは腱膜性の下垂で、手術を受けることによって楽に開瞼できるようになり、眼瞼下垂により生じる肩こりや頭痛などの諸症状の改善も期待できます。

診断

①MRD(margin reflex distance)MRD
 瞳孔の中心と、まつ毛の生え際までの距離を計測し、MRDが3.5mm以下(未満)で眼瞼下垂症と診断されます。
②筋力チェック
 眉毛を押さえた状態で、最も下を見たときと、最も上を見たときのまぶたの下縁の移動距離を測定します。15mm以下の場合、眼瞼下垂と診断されます。
③腱膜性チェック
 点眼薬を使用した検査法です。点眼により、下がったまぶたが一時的に上がった場合、腱膜性眼瞼下垂と診断されます。

 上記の診断基準を満たした場合、保険が適応されますので安心して治療が受けられます。

治療

 下垂の種類により手術方法も異なりますが、局所麻酔下に日帰りで行います。
 後天性の下垂、または挙筋機能がそれなりに温存されている場合には、基本的に重瞼線に沿って切開を行います。皮膚の余剰がある方は、余剰な皮膚も同時に切除します。腱膜の状態を確認したのち、腱膜のみの調整で改善が得られる方、眼窩脂肪の切除が必要な方、その他、ミュラー筋に対する処置が必要な方等に分かれ、手術時間は両眼でおよそ20分~40分程度です。
 先天性の下垂、または挙筋機能がかなり低下している場合には、前頭筋の収縮を利用したつり上げ術を行います。重瞼線と眉毛上を切開し、その間に皮下トンネルを作成して上眼瞼と前頭筋を筋膜または人工の組織にてつなぎます。筋膜を使用する場合と人工の組織を使用する場合で手術時間は異なりますが、両眼でおよそ40分~60分程度です。
 当日は創部にガーゼをあてて帰宅しますが、翌日の再診後からは洗顔も可能です。眼瞼は組織が柔らかく腫れやすい上に、圧迫することができませんので、数日はそれなりに腫れ、内出血を生じることがあります。日常の生活には支障ありませんが、旅行などの用事がある時期は避けた方がよいでしょう。約1週間後の抜糸の頃には8割程度の腫れが引きます。切開は重瞼線または眉毛下、眉毛上で行いますので、傷跡はほとんどわからなくなります。

【※保険適応による眼瞼下垂治療と自由診療における眼瞼下垂症の違い】

 保険による眼瞼下垂症手術の場合、基本的に機能改善が第一の目的となります。形成外科専門医による手術ですので、もちろん仕上がりも満足度の高いものとなりますが、美容目的の手術ではありませんので、機能的支障のない手術、外見的な問題(ついでに二重にしてほしい、幅を広くしてほしい、余った皮膚も取ってほしいetc‥)に関しては自由診療となりますのでご了承ください。
 自由診療による手術の場合には、機能的改善+審美的な面からあらゆる要望に対応した手術を行います。その場合、保険は適応されませんが、医学的に可能な限りとことん対応します。

逆まつげ

原因

 まつげが眼球に向かって生えてしまうタイプと、まぶたが眼球側へ向かってしまうタイプがあります。

症状と経過

 眼がゴロゴロとし涙や目ヤニが多くなったりします。ひどくなると角膜に傷をつけて視力の低下を招いてしまう場合がありますので早めの治療が望ましい疾患です。

治療

 手術は局所麻酔下に日帰りで行い、両眼でおよそ40分です。当日は創部にガーゼをあてて帰宅しますが、翌日の再診後からは洗顔も可能です。約1週間後に抜糸を行います。切開は上眼瞼の場合には重瞼線、下眼瞼の場合には睫毛の直下で行います。いずれの場合もほとんど傷跡はわからなくなります。
 保険が適応されますので安心して治療が受けられます。

眼瞼痙攣(がんけんけいれん)

症状と原因

 眼を閉じる筋肉が本人の意思と関係なく痙攣し閉じてしまう病気です。原因ははっきりとしていませんが、開眼筋の一つであるミュラー筋の受容体を介した交感神経の緊張が関係していると言われています。瞬きが多くなり、光をまぶしく感じたり、ひどくなると運転など日常の生活に支障をきたすようになります。眼瞼下垂の方に併発している場合が多くみられます。

治療

 これまではボトックスと呼ばれるボツリヌス菌という細菌が作り出すA型ボツリヌスから抽出した毒素を目の周りに注射することで、眼を閉じる筋肉を麻痺させ症状を抑える治療が中心に行われてきました。現在も主流の治療法の一つですが、数か月たつとその効果も薄れるため定期的に注射を行う必要があります。保険が適応されていますが、尚ボトックスは高価であり継続することが難しい治療でもあります。
 最近では開瞼筋の一つであるミュラー筋に対する手術が開発され、根治的な結果が得られるようになりました。当院でも十数年来の眼瞼痙攣の方の痙攣が消失するなど良好な結果が得られています。

手術

 局所麻酔下に日帰りで行い、片眼でおよそ30分です。基本的に前述の下垂の手術に沿った流れで手術を行い、ミュラー筋に対する操作を追加します。手術のすぐ直後から症状の改善を実感でき、また根治的であることがこの手術の最大のメリットです。眼瞼下垂を伴っていることも多く、同時に下垂に対する手術が行えますので非常に喜ばれる手術です。当日は創部にガーゼをあてて帰宅しますが、翌日の再診後からは洗顔も可能です。約1週間後に抜糸を行います。
 保険が適応されますので安心して治療が受けられます。