2023.11.02 / 院長ブログ
新型コロナウイルスによる後遺症『抜け毛』について 

 最近コロナ感染後の抜け毛に悩まれている患者さんが再び増えてきました。おそらく7月8月に流行をみせた第7波の後遺症と思われます。以下は2021年10月にブログで書いたものですが、参考にしていただけると幸いです。

 新型コロナ感染後に生じた抜け毛の問題について、以前ワイドショーで海外の事例が紹介されていました。知識としては知っていたのですが、最近になり当院にもコロナ感染後に抜け毛を生じた方が来院されています。その方々に共通することは、コロナ感染から回復した後、1ヵ月程度を経て抜け毛を自覚されたとのことです。
 コロナ感染に関しては未知の部分も多く、正確なことはわかりませんが、これまでの報告事例などをまとめ考察してみます。


 一般的に毛髪は5~6年の成長期、2~3週間の退行期、3~4か月の休止期のサイクルを繰り返しています。成長期が終わった後、毛根が委縮して休止期に入ります。それぞれの毛でサイクルが異なるため通常一斉には抜けることはありません。しかしながら、新型コロナに感染すると何らかの原因で成長期が急にストップしていまい、休止期に入ってしまうのではないかと考えられています。これを休止期脱毛といい、その他高熱、出産後、外傷、術後、急激な体重減少、急激な精神的ダメージなどでも同様のことが起こります。
 国立国際医療研究センター * 1からの報告では新型コロナ患者の24%が回復期に脱毛を訴え、新型コロナ発症2ヶ月後くらいから始まり、およそ100日後くらいまで続くことが多いとされていますが、海外の報告*2では、重症度に関係なく、新型コロナ発症から3〜7ヶ月後くらいに脱毛が現れるとの報告もあり幅が見られます。
*1Prolonged and Late-Onset Symptoms of Coronavirus Disease 2019
*2Telogen effluvium: a sequela of COVID‐19

 上記データを読み解くと、特に対策をせずとも脱毛からおよそ半年くらいで徐々に毛髪が回復してくると予想され、実際に他でもそのような報告が多数認められます。一般的な休止期のサイクルが3~4か月ですので、何らかの原因で退行期を経ずにいっぺんに休止期に入った毛髪が、3~4か月(100日前後)の休止期を経て再び成長期に入り発毛したと考えるとそれを裏付けることになると思います。
 しかしながら、急激な脱毛を半年もそのままにしておくのは精神的にもかなり負担となります。現在コロナ脱毛に対する治療のガイドラインなどはありませんが、血管を拡張することで発毛効果が認められるミノキシジルやその他外用剤、内服薬、またサプリメントなどを用いて治療を行うことが多いようです。
 年齢、性別、既往歴の有無などにより選択できる治療法にも幅がありますが、当院でも対応していますので、気になる方はお気軽にご相談ください。