2021.07.07 / 院長ブログ
昨今のニキビ事情と漢方薬
コロナ禍の昨今、公共の場においては常にマスク装着が求められる状況にあります。そんな中、口の周りにポツポツと小さな膨らみを主訴に受診される方が増えています。肌あれ?と思い込みがちですが、実はでき始めの「ニキビ」尋常性痤瘡 (じんじょうせいざそう) かもしれません。ニキビは思春期特有の疾患と思われがちですが、最近はこうした「大人のニキビ」が増えており、20代30代ばかりでなく40代50代の方にもよく見られます。
20歳以降に見られる「大人のニキビ」は、あごや口の周囲、フェイスラインにできやすいのが特徴です。
現在のニキビ治療は、以前とは異なり、新しいニキビを作らせなくする治療が主流となっています。
以前は、できたニキビに対して『局所に』抗生剤の外用を行うのが主流でした。外用を行ったニキビが治っても、一度ニキビができてしまうと、炎症後の赤みは数カ月続きます。そのうちまた別の場所にニキビができて、そこに赤みが残るという負ループを繰り返していました。
現在では、できたニキビに対して治療を行うのではなく、ピーリング効果のある外用剤を『顔全体』に外用することで毛穴のつまりを改善し、そもそも新しいニキビを作らせなくしていきます。ニキビをもとから絶つという点で根本的に治療が異なります。
しかしながら、そのような外用薬のほかに、患者さんの状態に合わせて局所に対する抗生剤や内服の抗生剤などを組み合わせて治療しますが、難治性のニキビが存在することも事実です。
漢方薬は以前から治りにくいニキビ治療に多く用いられてきました。病気の根本的な原因や体質を改善してニキビができにくい体を作ると同時に、症状そのものを抑えることでニキビを改善していきます。
そのうち、十味敗毒湯(ジュウミハイドクトウ)に含まれる荊芥(ケイガイ)・甘草(カンゾウ)の持つアクネ菌に対する抗菌作用がニキビに効果があるとして古くから用いられてきましたが、最近では男性ホルモンの分泌を抑える効果があることがわかっています。十味敗毒湯に含まれる桜皮(ヤマザクラの樹皮)が、皮下の繊維芽細胞からのエストロゲン産生を誘導し、にきびに対して抑制的に働くとのことです。皮脂の分泌の多い男性や若い世代のニキビに良い適応です。
一方、桂枝茯苓丸加薏苡仁(ケイシブクリョウガンヨクイニン)は強い炎症を起こしたニキビに有効とされる漢方です。漢方の世界で悪血と呼ばれる、血行障害、うっ血をともなう炎症に効果的で、肌荒れ、肝斑、ニキビ、疣贅などの皮膚症状、その他、頭痛、肩こり、めまい、生理痛などにも処方されます。特に月経前にできるニキビに有効で、更年期障害や冷えの治療にも用いられるので、どちらかというと大人の女性に適した漢方と言えるでしょう。
炎症が悪化・慢性化し、膿が溜まっているニキビに向く、荊芥連翹湯(ケイガイレンギョウトウ)。特に思春期の皮脂が多いニキビに適しており、副鼻腔炎や扁桃炎などを併発している場合にも効果があります。
発赤・化膿傾向の強い、隆起した皮疹やニキビに向く清上防風湯(セイジョウボウフウトウ)は、体型がしっかりした人に特に適しています。